ギュンター・グラスのイスラエル批判をめぐるテレビ番組のトーク・ショー(女性キャスター、マイブリット・イルナーのショー)(2)ビルト紙の記事から

ギュンター・グラスをめぐってケンカ腰のトーク・ショー

セバスツィアン・デリガ

 

「老人と彼の詩」、このようにキャスターのマイブリット・イルナーは彼女の昨日の放送を開始した。番組の表題は「さらし者になったグラスーイスラエル批判はほんとうにタブーか?」というものだった。ギュンター・グラスのイスラエル批判、反ユダヤ主義の紋切り型表現、イランの役割をめぐるトーク・ショーである。とりわけ二人のゲストが本格的な言い争いになった。

 

マイブリット・イルナーは「ドイツの詩と真実をめぐる論争」を主催した。ノーベル文学賞受賞者のギュンター・グラスは彼の詩において「言わねばならないこと」においてイスラエルをさらし者にし、イランを核兵器で攻撃しようとし世界平和を脅かしているとイスラエルを非難した。

 

ミチェル・フリードマン氏:「そのような言葉の爆弾を使用できる人物は、批判もまた厳しいものであることを覚悟しなければならない。」グラスはタブーを破ったわけではない。イスラエル政府の政策を批判することができることは当然のことだ。

 

フリードマン氏は言う、「批判の可否ではなく、どのように批判すべきかが問題なのだ。」グラスは空想力でもって議論しており、「絶滅戦争」というような愚劣な概念や「世界ユダヤ主義、ユダヤ人の権力、ユダヤ人の破壊力」というような紋切り型の反ユダヤ主義的な言い回しをもてあそんでいる。

 

グラスは自分たちの世代の罪を相対化している、自分たちにとって自分たちが我慢がゆっくようにするために。彼(フリードマン氏)にとってみれば、グラスは「ほら吹き」である。そのように作家グラスは彼の詩の中でイラン大統領ムハマド・アハマディネジャドを無害化しつつ呼んでみせていた。

 

フリードマン氏の明確なグラスの詩に対する批判である。しかしフランツィスカ・アウグシュタイン氏は激しく反論する。

 

フリードマン氏の解釈を彼女は「魅力的」であると見なす。しかしグラスの詩の中にはそんな内容は全然見つからない。グラスはたんにイスラエルのイランに対する攻撃を警告しているだけで、そのことは正当であるとアウグシュタイン氏は言う。このジャーナリストは言う、「イランはイスラエルを地図の上から掃き出したいとは思っていません。」「イラン人は核爆弾を望んではいません。」それにもかかわらずイスラエルとアメリカの反イラン勢力はイランを破壊しようとしているという。とはいえ、くりかえしイスラエルを破壊すると脅かしたのがイランの大統領であることは彼女は言わない。

 

これに対してフリードマン氏、アウグシュタイン氏はグラス同様、原因と結果を取り違えている。攻撃者の役割を担っているのはイスラエルではない、その存在の権利を否認されている世界で唯一の国家としてイスラエルは自身を防衛しなければならない。それにもかかわらずイスラエルの政策が論議を呼んでいる。フリードマン氏は言う、「ニーベルンゲン族の忠誠は存在しないのです。」防衛大臣トーマス・デメジエル(CDU)などはイスラエルの防衛大臣エフド・バラクがベルリンを訪問した際率直に批判している。

 

しかしアウグシュタイン氏は自説をひるがえすことはなく、「イスラエルは安全です」と主張する。

 

フリードマン氏:「何ですって?」

 

イランは平和的であり、1980年から1988年にかけてのイラン・イラク戦争の際に戦争を仕掛けたのはイラクであるとアウグシュタイン氏はあくまで主張する。「8年もつづいた戦争を先導したのはイランではありません。その戦争がイランの誰ものこころに痕跡を残しているのです。」

 

両ゲストの間の前線は膠着状態に陥った。あくまで外交的だったのは元大使のアヴィ・プリモル氏である。イスラエルにも、イランと正当に交渉するのはどうすべきかの論争があるというのだ。

 

近東における支配的勢力となり、「世界の全石油埋蔵量の57パーセントを支配する」ためにイランが核兵器を製造しようとしているとプリモル氏は考えている。そうすれば、石油でもって他の諸国をおどすことのできる大国にイランはなることができると言うのだ。

 

プリモル氏:「イスラエル人はほんとうに不安がっているのです。」

 

彼にとってドイツ人の最悪の偏見は、イスラエルを攻撃的な国を見なしていることだという。これはグラスもまた詩の中で用いているような決まり文句に過ぎない。しかしグラスは彼にとって「反ユダヤ主義者ではない」とプリモル氏は明言する。グラスはプリモル氏やその後継者がイスラエルの大使として入国した際歓迎しようとしなかったにもかかわらず、である。

 

プリモル氏:「グラス氏にとってイスラエルはつき合うのがやっかいな相手なのです。」

 

 

ギュンター・グラスと彼の詩をめぐる感情的かつ困難な議論であった。キャスターの述べるところによれば、グラス自身はイルナーのインタビューに応じようともしなかったし番組に出演しようともしなかった。けれどもグラス不在でもイルナーのトーク・ショーのゲストは攻撃的であった。まったく相反する諸々も意見がさかんに行き交った。