マルセル・ライヒーラニツキがグラスを批判

フランクフルター・アルゲマイネ新聞 文芸欄

2012年4月7日

 文芸評論家マルセル・ライヒーラニツキは、ギュンター・グラスの論議を呼んでいる詩「言われねばならないこと」についてはじめて態度を明らかにし、このノーベル賞受賞者をきびしく批判した。「吐き気を催させるような詩だ」、政治的にも文学的にも無価値、とライヒーラニツキはフランクフルター・アルゲマイネ新聞日曜版に対して語った。彼によれば、グラスは「世界を転倒」させている。「イランがイスラエルを抹殺しようとしているのだ、これはイラン大統領がくりかえし明らかにしていることなのに、グラスは反対のことを詩に書いている。」

 ライヒーラニツキはホロコースト記念日の1月27日残存者として連邦議会で演説した。その彼が「このようなことを発表することは破廉恥なことです」と語った。「それ以上にこの詩は大いなるナンセンスです。イスラエルこそが世界平和に大いに関心をもっているのです。」この詩は「ユダヤ国家」に対する計画的な攻撃であるにとどまらず、全ユダヤ人に対する攻撃である。「パレスティナ人やアラブの人々がイスラエルに対して攻撃を仕掛けるのだとしたら、それは特別なことではありません。しかしギュンター・グラスのような人物がイスラエルを攻撃し、それもユダヤ人に対してこうもきびしい態度をとるというのは、当然ながら一つの事件です。」

 事態を明確にしようとしている風のこの詩は、実際にはささやき声で邪推をひろめている。「グラスは、何ごとかを隠そうとするとき、いつも態度が不明瞭になります。ドイツではイスラエルを批判することはタブーではない、とライヒーラニツキは強調する。グラスはこれをタブーだと申し立てることによって自分の詩の効果を高めようとしている。彼がこの詩を意図的に、ユダヤ教の最も重要な祭日である過ぎ越しの祭りの日に先立って発表したことも効果を狙ってのことだ。言われねばならないことを明確に語ろうというこの作家の主張はこの詩そのものに矛盾している。ギュンター・グラスは反ユダヤ主義者ではないが、住民の一部にある反ユダヤ主義的な傾向に対してことさら訴えかけている。だからこの詩は私を不安にもするとライヒーラニツキは語った。